先日pixivにアップした英宗小説につけたアンケート、「悲恋も好き」派と「くっつけばなお良し」派に美しく分かれてる。ご協力ありがとうございますm(__)m
私は基本ハピエンが好きだけどあれは何故か急に書きたくなりました。不思議。
以下宗英です。
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巴里にて(宗)
「…どうしたの、急に」
「いや、何となく気になっただけだけど」
彼は緊張した面持ちで自分の髪をいじりながら口を開いた。
「えっと…付き合っている人は、いないかな…」
何だか微妙な返事だ。
聞いていてスッキリしない。
僕は彼の傍に手をつき、身を乗り出して確認した。
「それは、好意を寄せている人はいるということなのかね?」
単に腑に落ちないのが嫌で尋ねると、彼は珍しく目を泳がせた。
「…どうして、そんなことを聞くの?」
温かい食事と照明のせいなのか、薄い耳が赤くなっている。
動揺させるつもりはなかったけれど、個人的なことに踏み込みすぎたかもしれない。
僕はしばらく迷った後で、先日のことを話した。
「急にすまなかったね。実は行きつけのパン屋の店員に、週末に恋人が来ていると勘違いをされて」
彼にとっても思いがけない話だったのだろう。
天祥院がきょとんとした。
「それって僕のこと?」
「うむ。それ自体は誤解とはいえ、考えてみればパリに限らず海外では何をするにもパートナーと一緒というのが基本だろう?在学中の三年間で少しでもパリのことを吸収するには、僕もこちらで恋人を見つけるのがいい気がして…でも、今までそういうことに興味がなかったからよく分からないし」
「ああ…それで、同い年の僕はどうなのか、興味本位で聞いてみたんだ?」
さっきまでとは打って変わって冷めた目をした天祥院に気まずさを感じながら頷いた。
「そうだね、恋愛ごとなんか下らないと教えてきた手前、影片にこういう話題は振りにくいし」
「…そう」
天祥院は小さくそれだけ言って俯いた。
「すまない、軽い気持ちでプライベートな質問をしてしまって」
「…斎宮くんは」
微かな声に、僕は首を傾げて彼の言葉を待った。
「斎宮くんはパリジェンヌと付き合いたいの?」
「いや、特にそういう訳ではないけれど…でも、大学もアパルトマンもフランスの人間ばかりだし、パリで恋人を探すと自然とそうなるんじゃないかね」
「そっか」
硬い横顔に、僕は重ねて詫びた。
「悪かったのだよ、怒らせるつもりは…」
「別に怒ってなんかいないよ。斎宮くんは恋愛を手段にする人じゃないと思ってたから、ちょっと意外だっただけ」
「いや、こちらの人と付き合うことで学ぶことはあるだろうけれど、それが目的ではないのだよ。付き合うのであれば、将来のことも考えるつもりでいるし」
「…」
天祥院は腹が膨れたのか、それ以降はあまり食べなかった。
「もう食べないのかね。君が湯豆腐だけで満腹になるとは思えないのだけど。何か作ろうか?」
「大丈夫だよ、いっぱい食べたから」
彼はそう言った後で、ふと表情を曇らせた。
「…休日に僕が来たら、お邪魔かな」
「変なことを気にするのだね。まだ出来てもいない彼女に遠慮することはないだろう」
いつも厚かましいくせに妙な気兼ねをするのがおかしくて笑った。
彼はその日、いつもよりも早く寝室に入っていった。
普段の天祥院は夜中まで僕の傍で取り留めのないことを喋っているので(僕はいつも作業中なのでその話の大半を覚えていないが)、彼がいるのに静かな夜はどこか変な感じがした。
(続)