初ヒートで斎宮さんがせいよく強めって判明したので、それ以降セッ…のお誘いに余念がない英智さんと、向こうから誘われたならしょうがないという屁理屈で英智と本番セッ…する斎宮さん。
六(宗)
発情期が過ぎ去った後の朝。
我に返った僕は薄々現状を把握して茫然とした。
無事に『番』になることは出来た。
でも一週間英智の面倒を見られたかというと。
英智にはあらかじめ「未経験だから上手くないかも」とは伝えた。
(それにしたってこれは、そういう問題ではない気が…)
セックスは充分を通り越してオーバーキルだし、介抱の面でも落第だ。
朝日の差し込む寝室で、『番』になるのに必要なうなじだけでなく肩や太ももにまで噛み跡をこしらえて、全裸で気絶したように眠っている英智を見た僕は頭を抱えた。
(僕がしたのかね?これを?)
途中で暴漢でも乱入したんじゃないだろうかと本気で考えた。
そのくらい英智の姿は目も当てられない。
他のアルファはどうであれ、この僕ならフェロモンに影響されず理性的に事を進められると信じていたのに。
「え…英智、大丈夫かね。すまない、もっと…」
ゆさゆさ、と彼の体を揺する。
「もっと穏便にと、思っていたのだけど…」
「ぅ、ん…」
重たそうに瞼を開けた英智が、僕を見るなり赤くなった。
「……ぁ」
「英智?どこか辛いかね」
「そうじゃなくて……斎宮くんって意外と、ええと…」
彼の言わんとするところを察して恥じ入った。
「すまない」
「いいよ、キスの時からそんな気はしてたから…」
「…?キスは君からして欲しいと言ったんじゃないか」
「はいはい、まったくもう」
何故か呆れた様子の彼に重ねて詫びた。
「とにかくすまなかった…次は気を付けるから」
「…次って、夏の発情期こと?」
「そうだけど」
そう言うと英智は切なげに眉を寄せた。
「それまでは、もうしないの?」
「ぅ…」
朧げな記憶の中でも英智は可愛かったし、彼を抱くのは気持ち良かった。
でも必要以上に僕が英智に触れるのは悪い気がしてならない。
(だって本当は渉を好きなのに、生活のために僕と『番』になって、さらに日常的に僕に身体を…というのは…)
「べ、別に普段はしなくても良くないかね。ヒートの時はちゃんと付き合うから…」
「発情期の時だけ義理で付き合ってくれるってこと?」
「それは」
「僕は幸せだったけど斎宮くんは違った?気持ち良くなかったならもっと練習するから、して欲しいことを教えてよ。僕、何でも……ぅん……」
理性と欲望の葛藤はあっけなく後者が勝利を収めた。
一途に話しかけてくる英智の唇を奪って、再び彼に手をつけた。
「っ、どうしてまだ、げんきなの…、…ぁ……」
あん、あん、と声を上げる彼から特別な香りはしない。
ヒートは昨夜で終わっている。
七(英智)
最近、消灯時間が早くなった。
電気を消した後が長いから。
隣に敷かれた斎宮くんの布団に潜り込んで「いい?」と誘うと、伸ばされた両手が僕を抱き寄せる。
軽くキスを交わして、好きな人の手が服の中に入ってくる感触にドキドキした。
すっかり馴染んだ手のひらが背中を撫でて、胸元を可愛がってくれる。
「はぁ…ぁん…」
二人で過ごした発情の時以来、斎宮くんは僕の胸がお気に入りだ。
色素が薄くて貧弱そうな胸はコンプレックスだったけど、斎宮くんは花のような色が綺麗だ、小ぶりな乳首がうぶで可愛いと言ってここに執心した。
ヒートの時と違って手つきが優しいのがもどかしい。
「もっと強くしてもいいよ…?」
「…いや、もうああいうのは」
斎宮くんはあの時のことをずっと気にしているけれど、手荒にされるのはイヤじゃない。
夢中になってくれる斎宮くんを間近でみられるのは幸せだった。
「じゃあ、こっち…さわって…」
「無理しなくていいのだよ」
「無理なんてしてないよ。僕のここに触るのはイヤ?」
胸ばかり構う斎宮くんの手を掴んで焦れている下半身に導く。
「そうではないけど…あまりやりすぎるのはどうかと…」
「言っとくけど胸にイタズラしてる時点でアウトだからね?本番をしなければセーフって考えは甘いよ」
「…」
都合の悪いことに黙り込んだ斎宮くんが、硬くなったあそこを手でそっと握って慰撫してくれる。
「は、ん……ぁん、ぁっ…」
「せめて声は控えてくれないかね。変な気分になるのだよ…」
「僕の声が変ってこと?」
「いや…もういい」
「変なの…んっ、はぁ……きもちいぃ…」
憧れの手にたっぷり愛されて興奮していると、布団を被ったままパジャマのズボンと肌着を下げられ、熱い塊が背後に当たる。
(しっかり大きくしてるくせに…僕が誘ったら手を出すのに自分からは来ないんだよね。変にプライドが高いんだから)
「ぁ、ン…!すぐ入れて……ぁぁんっ、ぁっ、いつきくん…いつきくんもっと…」
「…チッ」
忌々しそうな舌打ちの後、たくさん突かれて子種を貰って、夢心地で眠った。
(続)