「また斎宮殿が死んでおられるぞ」
十一(宗)
寝室で、先に布団に入った英智から浴衣の進捗具合について聞かれるのが最近のお決まりだ。
「浴衣って七月までに仕上がる?」
「急に質問が具体的になったね」
「七月のはじめに、敬人の家の近くでお祭りがあるから」
「ああ、それで」
「敬人と渉と僕で出かけるんだ。斎宮くんも一緒に行こうよ」
「そのメンツに混ざってもね…」
渉とは親友だし蓮巳もつい先日までクラスメイトだったが、その顔ぶれだと僕だけコミュニティが違う。
「斎宮くんなら浴衣くらい持ってるよね?せっかくお祭りだし浴衣デートしようよ」
「うむ…」
英智の浴衣は彼に似合うよう気合を入れて作っている。
だからこそ僕の手で綺麗に飾った彼を他人の前にポンと出すのは面白くない。
…かといってせっかく渉といるチャンスなのに僕が行くのも無粋な気がする。
(同じユニットだとそういう機会は珍しくないし、わざわざ二人の時間を捻出しようとも思わないのかな。僕も学生時代は家族より影片と過ごす時間の方が長かったし…)
特に地方ライブやドラマ共演などがあると拘束時間が跳ね上がって話す機会も増える。
睡眠時間を省いたら、今も僕より渉の方が英智と一緒にいる時間は長いんじゃないだろうか。
「分かったよ。僕も行けばいいのだね」
「うん」
「浴衣も必ず間に合わせるから心配しなくていいのだよ」
「うん、ありがとう」
英智が上機嫌で笑ってから、ちらりと僕を見上げた。
「ところで斎宮くん、今夜は早く来てくれたんだね」
「…そうだったかね」
しらばっくれたが、我ながら白々しい。
数日空けたし、そろそろしたい気分ではあった。
「今日はしてもいい?」
「まぁ…別に構わないよ」
「じゃあ、たまにはこっちに来て」
英智の布団に招き入れられると、彼の体温と匂いが色濃くておかしな気分になる。
布団を被ったまま英智の上に重なる。
「重くないかね」
「うん、平気。まだ動かないで」
英智がぎゅっと僕を抱いて目を閉じる。
(…そう言われても)
英智の布団が気持ちよくて元気になった一物が、彼の腹にしっかり当たってしまっている。
(これは普通に変態行為な気がするのだけど…)
欲情の証を押し当てられた英智は、怒るどころか嬉しそうにしている。
それを可愛いと思ってしまって、出来心で服の上から胸を撫でると、まだ触っていなかったのにぷっくり膨れた乳首が指先に当たった。
僕の僅かな動揺を察した英智が蠱惑的に笑った。
「何もしてないのに腫れちゃった…診てくれる?」
ボタンが飛ぶ勢いで英智の上半身を裸に剥いて、久しぶりに目の当たりにするピンクの乳首の腫れを手と口で念入りに調べ上げた後、下も脱がせて身体の奥まで指を差し入れて検査した。
その間ずっと喘ぎ通しの英智に「お注射もして…♡」と囁かれ、きっちり彼の中に注射を果たした僕は翌朝また自己嫌悪で死んだ。
(続)