「半月に一度、英智が宗のアパルトマンを訪れる」という設定の英宗ver小説です。
ブログで連載したかったけど最後まで全年齢でいけるか怪しいのでpixivで更新します。
はてなブログは文章のえっち描写はセーフっぽいけど、うちは版権だから念のため😞
でもpixivはアンケが設置できるのが良いです。好きな英宗の雰囲気を教えてください。
アンケすっげ分かりにくい場所にあるのどうにかならないのpixiv…昔に戻して…;_;
あらすじ:夢ノ咲卒業後にパリで暮らす宗と、半月に一度宗のアパルトマンを訪れる英智の話です。うまいこと騙されて英智の恋人(?)になっている斎宮さんと、秘密を抱えた英智さん。
序章だけサンプルがてら載せておきますので「続きを読む」からどうぞ。
もしよければpixivの方でお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
序(宗)
鍋のスープにパセリを散らすと、トースターがチンと音を立てた。
時計を見ると八時を少し過ぎている。
(…南雲は八時半には出発すると言っていなかったっけ?)
一人で暮らすには広いパリのアパルトマンには、昨日から後輩の南雲が泊まっている。
コンロの火を止めて二階に上がり、寝室の扉をノックしても返事は無い。
「入るよ」と言ってドアを開けると、部屋の奥から寝息が聞こえた。
「…雲…、南雲」
僕の何度目かの呼びかけに、ベッドで眠っていた南雲がゆっくりと目を開いた。
「んん…って、うぎゃぁ!?」
彼はすぐに血相を変えて飛び上がった。
「斎宮先輩!?すっ、スンマセン!」
「別に謝らなくていいのだよ。僕こそ勝手に部屋に入ってすまなかったね。八時を過ぎたし、そろそろ起こした方がいいと思って」
「八時!?起こしてくれてありがとうございます!でも、あの…」
南雲は気まずそうに布団の中に戻って、顔の上半分だけを覗かせた。
「この状況はマズいんで、一人にしてもらっていいっスか…?」
「まずいとは?」
「えっと、斎宮先輩にあんまりお世話になると、会長さんが色々と…」
「奴は昔から僕で遊んだ気になるのが好きなのだよ。僕のことで何か言われても真剣に取り合わなくていいのだよ」
「いやぁ、うーん…」
あくまで悩ましい態度をとる後輩に質問した。
「一体、奴に何を吹き込まれたのかね」
「あんまり頻繁に斎宮先輩のアパルトマンに泊まるなら仕事を回さないって…」
思ったよりも数段酷い内容に僕は頭を抱えた。
後輩相手に言う言葉だろうか。
「あれは幾つになっても子供だね。そんなことはさせないから、パリに用事がある時は気兼ねせずに頼ってくれていいのだよ」
「あはは…ありがとうございます」
ベッドを出た南雲に強く背中を押されて僕は廊下に出されてしまった。
二人分の朝食を用意して着替え終わった南雲に振る舞うと、彼は目にもとまらぬ速さで全てを平らげた。
空いた皿をシンクに運んだ彼は、僕に向かって頭を下げた。
「朝ごはんまで用意してもらってすんません!」
「ついでだから構わないよ。もう時間なのだろう?気を付けてね」
「ハイ!それじゃあ、失礼します!」
南雲は足早に玄関に向かった。
元気に走る後ろ姿を見送ってから、彼の泊まった部屋に行くと、物は片付けられて布団も畳んである。
(…後輩の方がよほどしっかりしているね)
影片が日本の大学に進学してから半年が経つ。
そこは僕が通う大学の姉妹校で、影片は三年目にこちらに編入する気らしい。
僕が夢ノ咲を卒業した頃は、影片はすぐに僕と同じ大学に進学する気でいたから、僕はそう遠くないうちに影片と二人暮らしをするつもりでこの広いアパルトマンを借りた。
その後、僕が大学卒業後もパリで活動したい気持ちが強くなったと影片に伝えると、彼は僕の本気を受けて「日本でやりたいことは全部やってからパリに行く」と日本国内の大学への進学を決めた。
…そういった経緯で、僕のアパルトマンは部屋が余っている。
使わない部屋は傷みが早いし、たまにしか会わない人間と喋ることでアイディアが浮かぶこともあるため、僕は夢ノ咲で付き合いがあった人間がパリに滞在する時は空き部屋を提供している。
一時期よく入り浸っていたのは海外活動が多い零だった。
月永も何度か泊めた。
天祥院家の事業の手伝いで海外に行くことがあるという蓮巳も来たし、後輩が海外で見聞を広げたいと言うが心配だから泊めてやってくれと鬼龍に頼まれて神崎を泊めたこともある。
神崎は料理上手で、一宿一飯の恩がどうのと言って豪勢な和食を作ってくれた。
他にも、半月に一度くらいは夢ノ咲関係者の誰かが泊まりに来るのが常だった。
同級生は遠慮を知らないのでこちらも手を焼くのだが(零は夜更かしだし、月永は片付けない。蓮巳は話が長かった)、後輩は揃ってしっかりしている。
だから、少なくとも後輩に部屋を提供する分には全く問題ないのだが。
(まさか後輩を脅しているとは、つくづく呆れた男なのだよ)
どこから聞きつけたのか、数ヶ月前に英智もまた当然のように僕のアパルトマンに泊まりに来た。
僕としては英智など門前払いで良かったが、奴は泊まる気満々だった。
天下の天祥院の御曹司が「今日の宿を取ってないんだ」とぬかすから、つい部屋に上げてやったのが運の尽きだ。
今度来たら後輩に迷惑を掛けるなと言ってやらないと。
+ + +
「やぁ宗。いま一人かな?」
南雲が来た翌週の土曜日。
アパルトマンの玄関でしゃあしゃあと手を振る英智の前で、僕は腕組みをした。
「ああ、一人だよ。君が夢ノ咲関係者に僕のアパルトマンに出入りしたら仕事を与えないなんて脅しをかけたせいで来訪者が減ったからね」
「まぁまぁ、苦情なら部屋で聞くから入っていいかな」
彼は僕の許可も取らずにさっさと上がり込んだ。
どうぞと言うまで靴を脱がない後輩たちの態度を見習わせたい。
「いい匂いがする」
「どうせ君は空腹なのだろう?昼食は用意したから皿くらい出してもらいたいね」
「分かったよ」
英智は慣れた足取りで空き部屋に行き、手荷物を片付けてキッチンに戻ってきた。
天祥院の一人息子を顎で使う機会など滅多にないから、僕はこの機を逃さずに彼にあれこれ指図する。
英智は手際よく動いた。
テーブルを拭いてカトラリーを並べ、スープ皿を僕に手渡した時に、僕と目が合った彼は悪戯っぽく笑った。
「そう怒らないで」
「怒っているのではなく呆れているのだよ。本気で後輩の仕事を奪うつもりなどないだろうに、つまらない脅しをかけて」
「あはは、流石に宗はもう騙されてくれないか。信用なんて得るものじゃないな」
「単に君の手口に慣れただけだよ」
言葉を交わしながら、僕はトマトスープを皿によそい、英智はそれをテーブルに運ぶ。
僕は皿を持つ英智の姿勢の良い背中を見守りながら、グリーンサラダをボウルに盛り付けた。
二人で向かい合ってテーブルに着くのにも慣れた。
英智は湯気の上がるスープを覗き込んで喜んだ。
「美味しそうだね」
「僕が用意したのだから当然なのだよ。君はどうせろくなものを食べていないのだろう?」
「ああ、相変わらずコンビニばっかり。でも月に二回はここで美味しいものが食べられるから、それを楽しみに働いてるよ」
名家のご子息はさぞいいものを食べているのだろうと勝手に思っていたが、話に聞く彼の食生活は酷かった。
仕事人間の彼は食事の時間を削ることを厭わない。
「食をおろそかにすると、いずれ倒れてしまうのだよ?」
「だからここでいっぱい食べているんだよ。うん、どれも美味しい。ドレッシングも絶品だね。宗のお手製?」
「…まぁね」
手放しの賞賛がくすぐったくて、僕はそっぽを向いた。
手料理を喜んで食べてくれる人間がいるのは悪くない。
+ + +
食事を終えた後、片付けもそこそこに英智が僕に小さく笑いかけた。
「一度してもいいかな」
「…今から?嫌なのだよ、まだ陽も高いのに」
「ちょっとだけ」
英智に手を引かれるまま、食卓を離れてリビングに向かう。
(…せめてベッドルームにしてくれればいいのに)
軽く扱われている気がして胸がちくりと痛んだ。
リビングの白いソファの傍で、英智が背後から僕を抱きしめた。
「…会いたかったよ。宗はどう?少しは寂しかった?」
「僕は、別に…」
するりと服の中に滑り込んだ手が、素肌をまさぐる。
息を殺して、半月ぶりの他人からの刺激に肌が喜んでいることを押し隠した。
「そんなに緊張しないで。こうするの、もう何回目だっけ?」
「いちいち覚えていないのだよ、そんなこと…」
口ではそう言ったものの、本当はちゃんと数えている。
英智とするのはこれで五回目か六回目だ。
…初めてのセックスだけは全く記憶にないから、計上していいかどうか判断がつかないが。
(続)